中学校3年生に薦めたい本100冊vol.10 1月

第3学年1月 もっと日本語を勉強しよう!

子どもたちの家庭での学習の中で、
一番時間が確保されていない
教科は何か?国語です。
残念でなりません。
私は、国語の一番の勉強方法は
読書だと思っています。
同じ読書でも、次の8冊なら、
さらに国語の力、いや日本語力が
格段に向上するに違いありません。
日本語をしっかり学ぶための8冊です。

その1
「なぜ国語を学ぶのか」(村上慎一)

本書の特徴の第一は、
相談に訪れる生徒と
国語教師との会話から
成り立っているという点です。
国語を学ぶ意味を、
教師と生徒がともに考えていくという
設定になっています。
一方的に価値を押しつけるのではなく、
学ぶ意味・意義について、
この本をきっかけに
読者自身に考えてもらいたいという
筆者のスタンスが
とてもよく現れています。

その2
「小論文に強くなる」(轡田隆史)

本書は「書く」ことについて
明確に論じています。
「書く」ことは「考えること」と
同一なのだということです。
考えるという作業は、
無意識のうちに心の中で
文章を紡いでいることなのですから。
そうなると、四六時中
何かを考えている私たちは、
実は常に「書いている」ということに
なるのです。

その3
「詩のこころを読む」(茨木のり子)

詩人・茨木のり子。
詩集はもちろんですが、
書いた文章すべてが
キラキラと宝石のような
輝きを持っています。
ここに収められている、
いろいろな詩人の作品も
もちろん素晴らしいのですが、
それを解説する茨木の文章は
さらに美しいのです。
そして美しいだけではなく、
なぜか心に鋭く
突き刺さってくるのです。

その4
「生きていくための短歌」(南悟)

定時制高校は、かつては
昼に働き、夜間学ぶ生徒のための
高校でした。
しかし、いつしか不登校等の理由で、
義務教育段階で
十分に学べなかった生徒の
学び直しの場となってきているのです。
本書には、
その定時制高校に通う生徒の、
一生懸命生きている姿が詠まれた短歌が
ぎっしり収められています。

その5
「部活で俳句」(今井聖)

ダンスをやりたいがために
俳句を詠む高校生の物語です。
どんなストーリーが展開するのか!
と思いきや、第2章以降は、俳句の
鑑賞や創作についての解説本でした。
「ダンスと俳句のコラボ」という
新しい高校生新ジャンル部活動
青春感動ドラマを期待していた私は、
完全に肩すかしを食らった格好です。
当たり前です。
岩波ジュニア新書なのですから。
ぶつぶつ文句を言いながら、
それでも楽しく読み進めることが
できました。

その6
「ことばの力」(川崎洋)

「会話は、言葉というボールの
 キャッチボールにたとえられます。
 悪口の言い合いは、
 グローブをはめていても
 手が痛いほどの強いボールの
 投げ合いに似ています。」
私たち大人は、子どもたちの
言葉のキャッチボールに対して、
「相手のことを考えながら、
 正確にボールを投げよう、
 そしてどんな球でも
 しっかり受け止められるように
 練習しよう」と
教えるべきものなのかも知れません。

その7
「文章の書き方」(辰濃和男)

内容は全部で3章、小見出しは
「広場無欲感」「平均遊具品」
「整正新選流」。
よくわかりません。
それもそのはず、本書は
良い文章を書くための
具体的なノウハウを
書いてあるのではないのです。
むしろ心構えを説いているのです。

その8
「日本語練習帳」(大野晋)

普段なにげなく使っている日本語の、
微妙な使い方の違いを
懇切丁寧に解説しています。
まるで大人のための「文法教室」、
日本語の学び直しができます。
「思う」と「考える」の違い、
「大丈夫」と「しっかり」の違い、
「意味」と「意義」の違い、…、
問題が提示され、
その後に詳しい用例と解説が
述べられています。今まで
気付かなかったことだらけでした。

その9
「演劇入門」(平田オリザ)

「演劇入門」とありますが、
実際のところ、
「演劇を始める」「脚本を書く」ための
入門としてはいささか不向きです。
本書はむしろ
「日本語論」「日本文化論」
「コミュニケーション論」として
貴重な視点を提示している書であり、
その観点で読むべき本なのです。

中学校3年生ともなれば、
1月は受験勉強で大忙しでしょう。
「読書なんて」と思うかも知れませんが、
TVやマンガやネットや
LINEやゲームやメールの時間を削れば、
読書の時間はすぐに
確保できるのではないでしょうか。

この8冊は、さらに大人の私たちの
日本語の学び直しのための
良書でもあります。
日頃使っている日本語を、
大人の私たちも
もう一度見直してみませんか?

(2020.10.4)

紺色らいおんさんによる写真ACからの写真

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